日本の睡眠時間は世界的に見ても短いことをご存じでしょうか。睡眠不足はいろんな面で健康に悪影響があり、「人生で感じる喜び」が失われると新たな研究によってわかりました。
睡眠の重要性、良質な睡眠をとる方法をご紹介します。
睡眠が足りていないとストレスへの反応が高まる
カナダのブリティッシュコロンビア大学の心理学助教授ナンシー シン氏らの研究グループは、合計1982人の33歳~84歳の成人男女を対象に、睡眠時間が日中の出来事に対する反応にどのような影響を与えるかを調査しました。被験者に睡眠時間など基本的なことを調査し、8日間質問を行いました。質問では、「昨夜の睡眠時間」「その日に経験したネガティブもしくはポジティブな出来事」「その出来事から受けた感情」などだ。
結果、睡眠時間が通常より少ないと、ストレスに対して反応が高まり、前向きなプラスの感情を失っていることが明らかになりました。
逆に、睡眠時間が長くなることで、ポジティブな出来事から受けるプラスの感情が大きくなり、ネガティブな出来事による影響も少なくなることも示されました。
十分な睡眠でポジティブな感情が増大
心理学助教授ナンシー シン氏は、「お互いハグをしたり、自然の中で過ごすなど、前向きなことを経験しすると多くの人はその日は幸せを感じます」とコメントしました。
しかし、被験者への質問結果を分析したところ、睡眠時間が通常より短い場合は、日中の出来事からプラスの前向きな感情を引き出すことが困難だと分かりました。
日常生活では、ストレスを感じる出来事が多く起こります。例えば、仕事のプレッシャー、家族や友人など人間関係、期待や競争などです。通常より睡眠時間が少ないと、これらのストレスを感じる出来事に、一層過敏になり、前向きな感情を失いやすい傾向にあるそうです。
ストレスへの対応を間違えると、健康面に影響が出てきます。ナンシー シン氏いわく、ストレスに相対しポジティブな感情を保てなくなると、うつ病や体内の炎症反応などが起こりやすくなるとのこと。
「糖尿病など慢性的な健康問題を抱える人は、通常より十分な睡眠時間をとることで、翌日のポジティブな出来事に対し、より一層前向きな反応になることがわかりました」とシー シン氏は言います。
睡眠不足は高血圧・精神障害・肥満・糖尿病のリスクも…
心理学助教授ナンシー シン氏らの研究グループは、合計1982人(33歳~84歳 成人男女)を対象に睡眠時間と翌日のネガティブな出来事とポジティブな出来事に対する搬送を調査しました。8日の期間は毎日、電話によるヒアリングを行い、日常の経験と昨晩の睡眠時間について聴取しました。
「ガイドラインでは7時間以上の睡眠時間をとることを推奨されていますが、先進国の多くの成人はこの基準を満たしていません。新型コロナウイルス感染症の拡大により、睡眠時間はさらに減少している傾向があります」、とナンシー シン氏。
「多くの研究により、睡眠不足は高血圧、精神障害や肥満、2型糖尿病などの慢性的な疾患、がん、心臓病、早死のリスクを高めることが示されています」、と続けて強調しました。
「私の研究では、睡眠時間の毎日のわずかな変化ですら、日中での出来事への反応に影響することがわかっています。睡眠を改善する対策を意識して行うことが必要です」
良質な睡眠をとるための5つの方法
睡眠を改善しやすい方法として、ピッツバーグ大学医学部は次のことをあげています。
◆規則正しい生活を
規則正しい生活をおくることによって、体内時計が生理的な活動やホルモンの分泌を調整し、睡眠の準備をしてくれます。この準備は自分の意識では制御できません。体内時計を整え、体を睡眠に誘導するために、毎日同じ時間に布団に入ることが必要なのです。
■ 夜遅くに食事しない
体内時計を整えるために規則正しい時間に食事をとることが望ましいです。食べ物を消化・吸収するにはおよそ2~3時間が必要となります。夜遅い時間に晩御飯を食べると、食事のすぐ後は胃の消化活動が活発に働き、大脳皮質や肝臓の働きも活性化し、結果としてなかなか寝つけず、睡眠が妨げられてしまいます。
■ 適度な運動
日中に運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られているという調査結果があります。負担が少なくて長続きする有酸素運動(30分のウォーキングなど)を毎日続けてみましょう。運動を習慣化することは、睡眠の質が良くなるだけではなく、肥満や糖尿病などの予防にもつながっていきます。
■ 深部体温を上げる入浴を
寝る直前に「深部体温(体の奥の体温)」をいったん上げると、その後に下り、眠りに入りやすくなるといわれています。入浴には加温効果があり、運動と同様に体温を一時的に上げます。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなります。「40℃のお湯に15分浸かること」をおすすめします。
■ 太陽光で体内時計を整える
朝に日光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされます。起床したら、まずはカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的です。
逆に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられます。夜の光には体内時計を遅らせる働きがあり、深夜になるほどその力は強まります。
スマートフォンやパソコンなどの画面にも注意が必要です。スマートフォンなどの画面から発せられる光にはいブルーライトが含まれています。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので影響が特に強いのです。寝る前はスマートフォンを操作しないようにしましょう。